研究概要 |
平成7年度は悪性腫瘍に対する集学的治療のうち、とくに電撃化学療法について基礎的な実験を行った。 平成8年度は大量に培養した悪性黒色腫細胞B16F10をC57BLマウスの眼瞼に移植し、皮下に大きな黒色腫の腫瘤を形成させ、遺伝子組み替えに用いられている電気穿孔器BTXモデルT820とオプティマイザーを使用して、腫瘍に1,000Volt/cmの電撃を加える実験を継続した。 この実験系を用いてコントロール実験から始め、各種の抗悪性腫瘍薬を用いて電撃化学療法を行った。マイトマイシンCや5フルオロウラシルなどは腫瘍細胞に対して直接浸潤効果が大きいためか、電撃穿孔器の効果はそれ程強くはなかったが、ブレオマイシンを使用すると電撃穿孔器の効果が大きかった。これはブレオマイシンが細胞膜を通過しにくいために、電気穿孔器で細胞膜に穴があくことにより、薬の細胞内移行が良好になるためと考えた。したがって、ブレオマイシンを電撃化学療法に用いると、薬の量が通常より少量でよいということが考えられる。この結果は後記する論文として発表している。 次に眼内腫瘍にも応用すべく網膜下に悪性腫瘍細胞の移植を試みている。 光線力学療法に関しては角膜、水晶体への悪影響が最も考えられるので角膜上皮細胞、実質細胞、内皮細胞を培養し、それに対してヘマトポルフィリン誘導体を作用させて実験を行った。それによると細胞内小器官のうちミトコンドリアへの影響がまず最初にあらわれた。今後はヘマトポルフィリン以外の光感受性物質の検討も行い、より良い光感受性物質の発見につとめる予定である。
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