平成7年度は悪性腫瘍に対する集学的治療のうち、とくに電撃化学療法について基礎的な実験を行った。 平成8年度は培養悪性黒色腫細胞をマウスの眼瞼に移植し、皮下に大きな黒色腫の腫瘤を形成させ、電気穿孔器で腫瘍に電撃を加え、各種の抗悪性腫瘍薬を用いて電撃化学療法を行った。各種の抗悪性腫瘍薬を用いて実験を行い、マイトマイシンCや5フルオロウラシルなどは腫瘍細胞への直接浸潤効果が大きく、電撃穿孔器の効果は大きくなかったが、ブレオマイシンは細胞膜を通過しにくいためか、電気穿孔器での効果が大きかった。 平成9年度は電撃化学療法にはブレオマイシンを使用するのが有利であることを利用し、それを眼内腫瘍に応用すべく実験を行った。培養悪性黒色腫細胞と網膜芽細胞腫の樹立培養株Y79細胞を網膜下に移植した。実験動物としてラットと家兎を用いたが、ラットでは眼球の大きさのために判定が困難であった。家兎の網膜下への腫瘍細胞の移植は可能であったが、網膜剥離が起こったり、移植細胞の発育速度が一定でなく、電撃化学療法の効果判定は困難であったが、ある程度の大きさの移植腫瘍には有効と思われた。 また、このブレオマイシンを用いた電撃化学療法は増殖細胞に有効であることが判明したので、緑内障での濾過手術に応用した。この手術では術後の線維芽細胞の増殖が手術の失敗につながっているので、電撃化学療法を応用し、線維芽細胞の増殖を抑制するのに成功し、臨床応用への道が開けた。 光線力学療法に関しては、この療法中の角膜への悪影響が考えられるので、角膜を上皮細胞、実質細胞、内皮細胞に分けて培養し、その培養にまず成功した。それぞれの細胞に対する影響は内皮細胞が一番強いようであった。またヘマトポルフィリン以外の光感受性物質としてATX-S10やボロンポルフィリンなども考慮中である。
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