研究概要 |
1.家兎5羽の右眼にトリアムシノロンアセトニドを20mgテノン嚢下注射し,左眼はコントロールとして経時的に4週間眼圧を測定した.しかし,副腎皮質ステロイド薬によると思われる明らかな眼圧上昇は見られなかった。そこで,投与量40mgとしてテノン嚢下注射をし,4週間眼圧を測定した。しかし,この場合も眼圧上昇は見られなかった。さらに両眼球を摘出し,隅角組織を光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した.また,一部の組織は,クプロメロニックブルーで染色して観察した.その結果,ステロイド薬投与眼と,コントロール眼とで,組織学的に差は見られなかった.以上の結果より,家兎眼では,副腎ステロイド薬に対する反応性が人眼とは違う可能性が示唆された. 眼虚血疾患で前眼部の血管新生が起こり,さらに続発縁内障が発症することが知られている.この前眼部の血管新生が網膜の虚血を伴わない前眼部の虚血のみで発症するか否かを家兎眼を使用して調べた.13羽の家兎の右眼の両側長後毛様動脈をパクレンで焼灼して,前眼部の虚血を起こした.術後経時的に眼球を摘出し,虹彩や隅角の組織をHEおよびGS-Iで染色して新生血管を調べた.また一部の組織は,血管新生因子の一つであるVascular Endothelial Growth Factor(VEGF)を免疫組織学的に調べた.さらにin situ hybridisationにより,VEGFのmRNAの局在を調べた.その結果,前眼部の虚血のみでも虹彩,隅角,角膜の血管新生が起こることが明らかになった.また,この新生血管の発症に毛様体で産生されるVEGFが関与する可能性が示唆された.
|