研究課題/領域番号 |
07671928
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
上原 文行 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (30168653)
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研究分担者 |
柳田 豊子 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 助手 (40271142)
鮫島 宗文 鹿児島大学, 医学部, 助手 (80041333)
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キーワード | 腫瘍 / 糖鎖生物学 / ムチン / Ki67 / ケラチン |
研究概要 |
腫瘍細胞の動態の検索に有用であることが、平成7年度に判明した糖鎖組織化学的手法を用いて、平成8年度には涙腺多形腺腫の解析を行うとともに、正常組織との対比を目的として、ラット眼瞼の複合糖質についても解析した。その結果、多形腺腫の腺管構造を形成する腫瘍細胞で、O-結合型のシアル酸含有複合糖質が産生され、その細胞が間質組織へと移行していくことが示唆された。これによって、従来からの多形腺腫の間質細胞は上皮由来であるとの考え方が、糖鎖生物学的観点からも間接的に証明されたといえる。一方、O-結合型複合糖質であるムチン関連糖鎖抗原の発現・分布について、免疫組織化学的に検索したところ、MUC1が眼瞼の扁平上皮癌と皮脂腺癌では全例発現するのに対し、基底細胞癌と良性腫瘍では全く発現しないことが明らかになった。臨床的に後者は遠隔転移しないのに対し、前者は遠隔転移しやすいことから、MUC1は腫瘍細胞の悪性形質の発現に関与している可能性が示唆された。それに対しMUC2は、眼瞼腫瘍では悪性、良性に関係なく、全く発現しないことも明らかになった。その他のマーカーについても免疫組織化学的に検討したところ、細胞増殖期に検出されるKi67の陽性細胞の割合が、眼瞼良性腫瘍に比べて眼瞼悪性腫瘍の方が高く、両者の鑑別に有用であることが明らかになった。眼窩リンパ系腫瘍に関しては、Ki67の陽性率に悪性リンパ腫と偽腫瘍との間に差は検出されなかったことから、両者とも活発に増殖する点で、共通した病変であることが判明した。さらに上皮系細胞の中間径線維であるケラチンの発現・分布についても検索したところ、眼瞼基底細胞癌は同一種類のケラチンを含む均質な腫瘍細胞で構成されるのに対し、扁平上皮癌と皮脂腺癌は種々のケラチンを発現、あるいは全く発現しない、様々な分化の程度の異なった腫瘍細胞で構成されることが明らかになった。
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