ヒトぶどう膜網膜炎の実験モデルとして、実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(以下EAUと略す)が知られている。EAUは網膜特異抗原であるInterphotoreceptor retinoid-binding protein (IRBP)やS抗原をラットなどに強化免疫することにより惹起される。近年開発された新しい免疫抑制剤CAMは、抗生物質MPAの誘導体であり、細胞増殖抑制作用を有する。CAMは経口投与で高い抗腫瘍効果とともに免疫抑制効果も有し、また副作用が少ないことが知られており、近い将来臨床応用が期待されている。今回の研究ではラットEAU発症後にCAM投与を開始し、臨床に近い状況でのCAMの抑制効果を検討した。LewisラットにウシIRBP50μgを免疫し、細隙灯顕微鏡で前眼部炎症が発症したことを確認後、CAM50mg/kg/dayの投与を開始した(免疫後11日)。免疫28日後に屠殺し、眼球の組織学的検索を行うとともに、bioassayまたはELISAにてIRBPに対するサイトカイン(IL-2、IL-6、IFN-γ、TNF-α)産生能を調べた。免疫後、CAMを投与しなかったラットを対照とした。組織学的に対照群では全例に網膜病変が認められたのに対し、CAM投与群では異常所見がなかった。また、サイトカイン産生は、対照群ではIL-2が66.7U/ml、IL-6が650pg/ml、IFN-γが6000pg/ml、TNF-αが70pg/mlであった。一方、CAM投与群ではいずれのサイトカインも測定限界値以下であった。 CAMはEAUのeffector phaseでの反応をも抑制し、組織傷害の進展を阻止することができた。現在CAMの投与量、投与期間または投与開始日を変えた検討を行っており、EAUさらにはヒトぶどう膜炎の治療薬としての可能性を追求している。
|