研究概要 |
眼アレルギー疾患の炎症細胞の浸潤に関与するサイトカインについてELISA法およびPCR法をもちいて検討を行った。 1.ELISA法をもちいたサイトカインの検索 好酸球の遊走に関与するケモカインRANTESおよびIL-4について涙液をマイクロピペットにて採取し、ELISA法をもちいて測定した。RANTESは、今回対象としたアレルギー性結膜炎では、全例検出された。治療により症状が消失した時期には陰性となった。正常コントロールの涙液からは、検出されなかった。また、角膜潰瘍を有する春季カタルでは、角膜所見を有さない春季カタル以外のアレルギー性結膜炎に比べ、高値を示す傾向があった。一方、IL-4は、春季カタルに陽性を認めたが、他のアレルギー性結膜炎では、陰性であり、今回の検討からは、アレルギー性結膜炎の病態との関連は、あきらかにはならなかった。 2.結膜組織におけるRANTESの免疫組織学的検討 春季カタル患者の上眼瞼瞼結膜の石垣状乳頭部の組織をアセトン固定後、抗ヒトRANTESモノクローナル抗体(マウス)を一次抗体、抗マウスIgG抗体(ウサギ)を二次抗体として、免疫組織化学で検討した。結膜上皮細胞は、基底細胞およびその直上の中間細胞に陽性を認めたが、正常結膜には、陽性所見は得られなかった。 3.RT-PCR法を用いたサイトカイン発現の検索 ブラッシュサイトロジーにより結膜上皮内から採取した細胞に対し、RT-PCR法によりサイトカインの発現を検討した。重症の春季カタルでは、季節性アレルギー性結膜炎および通年性アレルギー性結膜炎に比べRANTES、IL-4、TNF-α,IFN-γが高頻度に認められた。重症の春季カタルの結膜上皮内における炎症性サイトカインおよびケモカインの発現の上昇は、アレルギー性炎症の重症化に関与していることが推測された。
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