研究概要 |
β-シトリル-L-グルタミン酸(β-CG)がレンズに高濃度存在し、しかもレンズ細胞へと分化する細胞の多いレンズ皮質赤道部に局在していることを見いだし,本化合物がレンズ細胞の増殖あるいは分化に重要な役割をしているのではないかと考えた。そこでニワトリやウシの網膜の色素上皮細胞は限定された培養条件下で、脱分化して上皮細胞としての特性を失い、多能性の細胞に変化した後、培養条件によって、再び色素細胞へともどるか、あるいは水晶体線維細胞へと分化転換する実験系に着目した。 1.網膜あるいは虹彩色素上皮細胞から水晶体線維細胞への形質転換条件の検討ヒヨコ網膜色素上皮細胞から一度脱分化させた後に、水晶体線維細胞への形質転換は条件設定が微妙で、再現性のある培養条件を見いだせなかった。虹彩色素細胞から水晶体線維細胞への形質転換も試みたが、採取できる細胞数が著しく少なく本研究の目的を達せられなかった。そこで網膜色素細胞から直接水晶体線維細胞へ分化させる方法を試みたところ、効率よくレンズ様体が形成され、しかも再現性がよかった。抗β-CG抗体による染色を試みたが、どの細胞も明瞭には染色されなかった。 2.β-シトリルグルタミン酸特異水解酵素の部分的アミノ酸配列の決定β-CG特異的水解酵素由来ペプチドのアミノ酸配列の決定を試みたところ、総数47個のペプチドのうち16個のペプチドについて配列決定に成功した。140と90kDa、115と100kDaサブユニット由来のペプチド間で、それぞれ相同性の高い配列が確認された。また本酵素由来ペプチド断片のアミノ酸配列を既知のタンパク質とホモロジー検索したところ、一致するものはなかったが、115および100kDa由来ペプチド断片の一部がサイトケラチンとほぼ100%のホモロジーを示した。
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