研究概要 |
平成8年度は外眼筋の遅筋線維の収縮特性と疲労低抗性について調べた.そのために次の測定を行った. 1.白色家兎の下斜筋の支配神経を電気刺激して筋を収縮させた.この際,陽極電気緊張を応用して太い神経に支配される速筋線維はブロックしておき,細い神経に支配される遅筋線維のみを収縮させた. 2.筋を持続的に長時間(2分間)電気刺激で収縮させ続けると疲労して収縮張力は低下する.速筋線維のみから構成される眼球後引筋は速やかに疲労して張力はほぼ完全に消失する.これにたいして遅筋線維と速筋線維とを含む上直筋は2分後にも遅筋線維の張力が残る.この比較により遅筋線維の張力の占める割合を求めた. その結果, 1.遅筋線維のcontraction timeは20〜27msec.であり,速筋線維の10msec.と比較して明らかに長かった.すなわち遅筋線維はゆるやかに収縮していた. 2.2分間の刺激の後に残存していた張力は眼球後引筋では0gであった.これにたいして上直筋では2-3gの張力が残存していた.この遅筋線維の張力は上直筋の全収縮張力の約20%を占めていた. これらの結果から,遅筋線維は単にゆっくりと収縮して固視するのみでなく,高い疲労抵抗性を有して眼球の位置を長時間安定させる働きがあることが推察された.
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