経皮的胃電気活動記録(胃電図)は非侵襲的な消化管運動記録法の一つであるが誘導並びに解析法が難しくその臨床応用は限られていたが、測定機器及び解析方法の進歩により成人例では検討され始めてきた。しかし小児例での系統的な測定及び解析による報告例は見あたらない。そこで本年度は小児でも成人同様に胃電図が導出可能か、可能であれば食事投与前後でどの様に変化するか、更に食事の性状(成分)が如何に影響するか検討することとした。器質的な胃病変や自律神経異常を伴わない乳児から学童に至る小児を対象とした。誘導は乳児に対して施行した上部消化管透視を参考に幽門洞直上付近に銀塩化銀電極を双極誘導となるようにして数カ所貼付し空腹時、安静臥床下に導出記録した。先ず試験的に20例記録して検討する小児でも成人同様3cpm付近にピークを有する運動が心窩部で導出可能であった。この結果を基に食事の有無及び性状が如何に影響を与えるか検討することとした。予備記録施行小児とは別に32例を対象とした。これらを4群に分け調乳(乳児のみ)、low residue diet、balanced nutrition food、おにぎりを各々試験食とした。投与カロリーは各々10kcal/kgとし安静臥床下に空腹期30分、食後期30-40分記録しデータはA-D変換後MEM法で周波数解析した。これらより食事前後でのピーク周波数やピークパワー比の変化、更に各試験食でのピークパワー比の差異の有無を検討した。食事前後でピーク周波数に有意な変化は認められなかった。検査対象症例の約90%でピークパワー比は1以上を示していた。食事別ではおにぎりといった固形食群でピークパワー値が高値であった。以上の結果より新生児を含めた小児例でも成人と同様に胃電図の記録は可能で食後にはピークパワーが大きくなり食事別では固形食ではより著明であったことより食事の形状や成分がパワー比に何らかの関係がある可能性と、更に本法が胃排出能の目安となる可能性が示唆された。
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