膜型人工肺呼吸補助(ECMO)が、新生児肺血症に有効で、近年臨床にも導入されるようになったが、治療上の病態が明らかでなく、十分な普及を見ていない。今回、動物実験により腹膜炎を作成し、ECMOの効果と治癒機序を検索する目的で研究を開始した。当初、雑種幼犬をモデルとする計画であったが、動物の取得が困難となったため、ウサギ成体を用いた。しかし、ウサギにECMOを装着し長時間灌流を行なうことは、心拍出量が小さいため従来のローラーポンプでは困難で、約60分に制限されることが明らかなった。そこで、体外循環は充填容量の少ない遠心ポンプを使用した。膜型肺はクラレメノックスAL-2000を使用した。さらに敗血症モデルは、菌体の腹腔内注入を計画していたが、一定した腹膜炎モデルを得ることが困難なため、盲腸および盲腸動静脈を結紮する方法を用いた。実験は家兎(体重1、5Kg)を全麻下にて気管切開し人工呼吸器による呼吸管理を加え、頚動静脈に8Fシンウオールカテーテルを挿入した。遠心ポンプECMO回路に接続し、最大50ml/Kg/mの灌流量が得られた。灌流時間も約3時間可能であった。コントロールとして単純開腹術のみを行なった動物に120分のV-A ECMOを行なった。手術後に血液ガス検査所見は良好であったため、ECMOによる改善は明らかではなかった。現在、腹膜炎モデルを作成しているが、敗血症による呼吸循環不全に陥る動物がなく、ECMOの効果を得られるに至っていない。研究経費は、動物購入費、膜型人工肺、ECMO回路、遠心ポンプヘッド、麻酔薬品の購入に充当した。
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