停留精巣の発生要因別にみた精巣機能の検討と新治療法の開発

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07671953
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 生野 猛 九州大学, 医学部, 助手 (30235717)
• 研究分担者: 水田 祥代 九州大学, 医学部, 教授 (30038856)
• キーワード: 停留精巣 / 実験モデル / フルタマイド / セルトリ細胞 / シメチジン / フタル酸エステル / ラット

研究概要

我々はこれまで停留精巣の発生メカニズムをラットやマウスを用いて発生解剖学的に研究し、マイクロサージャリーを用いて我々独自に開発した停留精巣ラットを停留精巣の新実験モデルとして英国小児外科学会(1995年)にて発表し、英文雑誌に掲載された(1996年)。さらにラット胎仔に抗-アンドロゲン製剤(フルタマイド)を投与して作成した停留精巣モデルとマイクロサージャリーにて外科的に作成した停留精巣モデルラットでは精巣の発達に明らかな差があることが判明しその結果も同様に英国小児外科学会(1995年)にて発表し、英文雑誌にも掲載された(1996年)。
この間、外科的に作成した停留精巣モデルでも停留精巣の位置により停留精巣の組織学的発達後異なることを証明し、その結果を第95回日本外科学会総会(1995年)、第6回日本小児泌尿器科学会総会(1996年)にて発表した。また停留精巣の発生に関して薬理学的な研究も行い胃・二指腸潰瘍に有効な治療薬として妊婦にも広く用いられてきたシメチジンや塩化ビニルの可塑剤として多くの日用品に使われているフタル酸エステルを妊娠ラットに大量投与すると雄仔ラットに停留精巣が発生することを発見した。シメチジンの持つ抗-アンドロゲン作用やフタル酸エステルのセルトリ-細胞に対する特異的な毒性がヒトの停留精巣の発生原因となる可能性を指摘し、英国小児外科学会(1995年)、アイルランド小児外科国際シンポジウム(1995年)、太平洋小児外科学会(1996年)等の国際学会にて発表し、フタル酸エステルを用いて作成した停留精巣モデルに関しては英文雑誌にも掲載された(1997年)。

研究成果

• [文献書誌] 生野 猛、水田祥代: "精巣下降におけるホルモンの影響" 医学のあゆみ. 174(11). 880-882 (1995)
• [文献書誌] Shono T,Suita S: "The effect of the excision of future scrotal skin on testicular descent in neonatal rats.-A new experimental model of cryptorchidism." J Pediatr Surg.30(5). 734-738 (1995)
• [文献書誌] Shono T,Goh DW,Momose Y,Hutson JM: "Physiological effects in vitro of calcitonin generelated peptide(CGRP)on gubernacular contractility with or without denervation." J Pediatr Surg.30(4). 591-595 (1995)
• [文献書誌] Shono T,Zakaria O,Imajima T,Siuta S: "Extra-abdominal fixation of the gubernaculum inhibits testicular descent in newborn rats." J Pediatr Surg.31(4). 503-506 (1996)
• [文献書誌] 今嶋達郎、生野 猛、Zakaria O,水田祥代: "Mono-n-butyl phthalateを用いて作成したラット停留精巣の新モデル" 医学のあゆみ. 177(11). 773-774 (1996)
• [文献書誌] Imajima T,Shono S,Zakaria O,Suita S: "prenatal phthalate causes cryptorchidism postnatally by inducing the transabdominal ascent of the testis in fetal rats" J Pediatr Surg.32(1). 18-21 (1997)
• [文献書誌] Zakaria O,Shono T,Imajima T,Suita S: "Comparative histological study of the contralateral scrotal testes in two different unilateral cryptorchid rat models,in Abe O,Inokuchi K,Takasaki K(eds):Proceeding of XXX World Congress of the International College of Surgeone." Bologna,Italy,Litosei-Rastignano.1245-1248 (1996)
• [文献書誌] Shono T,Hutson JM,Watts L,Goh DW,Momose Y,Middlesworth B,Zhou B and Ramm-Anderson S: "Scanning EM shows inhibited gubernacular development in relation to underscended tests in oestrogen-treated mice." Int J Androl.(in press).