研究概要 |
実験前段階でのLewis ratを用いた小腸移植実験は平成8年1月頃から血管吻合吻合成功例が80%程度と安定してきたが、donorの胎仔肝造血細胞をrecipient予定の生後まもないratに静脈注射したところ、生存が極めて難しく、当初の実験計画におけるmodel作成が困難であったため、実験系を変更せざるを得なかった。 次に、rat小腸移植モデルにおける虚血再潅流障害、拒絶反応時の粘膜上皮の細胞増殖パターンおよびその経時的な変化を解析することとした。 同系移植(Lew rats)および異系移植(donor : BN rats, recipient : Lew rats)を作成し、cold ischemic timeを2時間とした。尚、graftはThiry Vella loopとし、各群において移植後1日目、3日目、5日目、7日目に犠牲死させ、graftを採取し、HE染色およびPCNA免疫染色にて組織学的検討を加えた。 その結果、同系移植モデルでは粘膜上皮細胞は一旦、虚血再潅流障害により脱落するが、移植後1日目から回復してくることが判明したが、crypt領域の細胞増殖活性は一貫して変化を認めなかった。異系移植においては同系移植と同様に粘膜上皮細胞は虚血再潅流障害により一旦脱落し、移植後1日目から回復してくるが、その後拒絶反応が原因で再度脱落することが判明した。また、crypt領域の細胞は移植後5日目から急速に増殖活性の低下が認められた。以上により、移植後のgraft粘膜上皮の脱落、および再生には虚血再還流障害と拒絶反応の両方が関与しており、移植後早期には虚血再還流障害が主な原因であることが判明した。それに加え、急性拒絶反応においてはcrypt領域の細胞増殖活性の低下が早期の拒絶反応の指標となる可能性が示唆された。
|