我々は活性化マクロファージが、ヒトおよびマウスの形質細胞にたいして致死活性を有する蛋白因子を産生し、この蛋白因子の精製とアミノ酸配列の決定により、これがTGFβファミリーメンバーであるアクチビンAであることを報告した。我々は、このアクチビンによるアポトーシス誘導機構の解析のために、アクチビンAの致死活性に感受性を有するHS-72マウスハイブリドーマ細胞株を用いてアクチビンAによるアポトーシスと細胞周期の関係を検討した。アクチビンA存在下での培養により、まず細胞周期G1期停止が、そしてこれに続いて、アポトーシス細胞の出現が観察された。アクチビンAによるG1期停止機構の解析のためにG1-S期移行制御において中心的な役割を果たしている網膜芽細胞腫遺伝子産物Rbのリン酸化状態を検討した。アクチビンAは高リン酸化型Rbの減少と低リン酸化型Rbの増加を引き起こした。Rbのリン酸化はG1サイクリン-CDK複合体とCDK阻害因子により制御されることが知られている。アクチビンAによるRbの低リン酸化機構の解析のためにHS-72細胞におけるアクチビンAのサイクリンD(D1、D2、D3)とCDK(CDK4、CDK6)およびCDK阻害因子(p15^<INK4b>、p16^<INK4a>、p21^<CIPl>、p27^<KIPl>)の発現におよぼす影響を検討した。HS-72細胞はD型サイクリンとしてサイクリンD2のみを発現しており、アクチビンAによりサイクリンD2mRNAと蛋白質は急速に減少したが、CDKとCDK阻害因子の発現に変化は見られなかった。以上からアクチビンAによりG1期停止はサイクリンDの発現抑制とこれに伴うRbの低リン酸化によることが示唆された。今後アクチビンAによるサイクリンDの発現抑制及びG1停止が、これらに引き続いてみられるアポトーシスとどのような関係にあるか検討されなければならない。
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