研究概要 |
舌つきだし筋と舌ひっこめ筋について、それぞれの運動ニューロン(舌下神経運動ニューロン)を同定し、その形態及び機能を調べた。形態の分析には、ニューロンの形態を三次元的に描画し、その形態のパラメータを分析できるシステム(Neurolucida)を用いた。舌下神経運動ニューロンの形態は、咀嚼筋運動ニューロンの形態と著しく異なっていた。舌つきだし筋と舌ひっこめ筋では形態の差異はほとんどなかった。その細胞体は面積が1200-1600μm^2で,幹樹状突起の数は平均7本であった。樹状突起は分岐のないものと、分岐を繰り返すものに分けられ、その広がりも極性を示すものと示さないものに分けられた。樹状突起の広がりは、細胞体の中心から1200μmのものがほとんどであるが、樹状突起の広がりに極性を示すものでは、細胞体の近くで渦巻き状にループを形成するものが観察された。また、咬筋神経や下歯槽神経を刺激して、舌下神経運動ニューロンで記録すると、様々な後シナプス電位が記録され、咀嚼運動と舌運動との連動が示唆された。この後シナプス電位が大きいものほど、舌下神経運動ニューロンの形態が複雑であることも示唆された。Neurolucidaによる分析から、舌下神経運動ニューロンの表面積や、樹状突起の三次元的な配置などのデータが得られた。これらのデータからコンピュータシミュレーションを行うと舌下神経運動ニューロンの機能と形態の関連や、咀嚼運動における役割などが解明できる。
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