研究概要 |
免疫組織化学的検索に用いる抗体や顎下腺原基の摘出の難易度の関係で、本研究の実験動物を当初計画していたマウスからラットに変更した. ラットの顎下腺原基を電子顕微鏡を用いて観察すると、導管中心部の細胞の核にクロマチンの凝集が認められ、顎下腺導管の管腔形成時における細胞変性がアポトーシスである可能性が示唆された. ラットの顎下腺原基を免疫組織学的に検索した結果、胎生16日には顎下腺原基全体に発現が認められたTGF-αが、胎生18日では導管系の細胞に局在しているのが観察された.TGF-αは成熟ラットでは顎下腺導管の顆粒細管の顆粒に認められた.一方、EGFは成熟顎下腺では、TGF-αと同様に顆粒細管の細胞に局在しているが、胎生期の顎下腺原基には発現を認めることができなかった.このことは、TGF-αが発生期の顎下腺導管部細胞の分化・増殖に関与している可能性が推測された.また,胎生16日から胎生18日にかけて,顎下腺原基上皮の全体にbcl-2に対しての陽性反応が認められた.しかし,成熟ラットの顎下腺においてのbcl-2の発現は線条部から顆粒細管にかけての導管のみに局在していた.このことから,胎生期におけるbcl-2の発現は上皮・間葉組織間の相互作用に関連して,顎下腺原基上皮の分化・増殖に深く関与していることが推測された. 胎仔から摘出した顎下腺原基上皮に対して無血清培養を試みたが,長期間の培養は困難であった.現在,培地にNGF,TGF-α等の細胞外因子を添加,または抗NGF抗体などの細胞外因子に対する抗体を培地に添加して,種々の細胞外因子が顎下腺原基上皮の分化・増殖にあたえる影響を検索中である.
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