唾液腺水分泌機構を解明するため、ラットおよびヒト唾液腺の組織片あるいは単離腺房を蛍光色素を含有した培養液でかん流し、分泌刺激を与え、共焦点レーザー顕微鏡で観察して以下の結果を得た。 1)水分泌時に膜動態:カルバコール刺激で水分泌を誘導すると、ただちに開口分泌が生じ、オメガ型の蛍光の凹みが観察された。融合膜は次第に拡大していき、30分以降にエンドサイトーシスによって細胞内にとりこまれた。対照としてイソプロテレノール刺激したものでは、融合膜は一個一個、数分以内に消失した。走査・透過電顕観察によりイソプロテレノール刺激では融合膜に被覆小胞がみられたが、カルバコール刺激ではほとんど観察されなかった。以上から、融合膜の処理機構が分泌刺激によって異なり、これが水分泌になんらかの影響を与えるものと推定された。 2)水分泌時にタイトジャンクション:培養液に膜染色剤であるFM1-43と蛍光ラベルしたデキストランと共存させ観察した。分泌刺激後、デキストランは分子量10万まで管腔内に検知できたが、FM1-43は側基底形質膜のみ染色し管腔形質膜を染色しなかった。水分泌時に、タイトジャンクションは細胞膜局所分化のフェンス機能は保持したまま、paracellular pathwayのバリヤ-機能を開くものと推定された。 3)IP3レセプターの局在とカルシウム動態:ラット顎下腺導管を単離し、リアルタイム共焦点レーザー顕微鏡でカルシウム動態を観察した。分泌刺激により一部の導管細胞頂上部からカルシウム濃度の上昇がすみやかに(1秒以内)観察された。IP3レセプターの免疫組織化学を光顕・電顕でおこない、dark cellやlight cellの頂上部に存在する小胞が反応陽性を示すことを確認した。これらの小胞は新しく同定されたIP3レセプターサイトで、カルシウムシグナリングにかかわる重要な構造物と思われた。
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