研究概要 |
平成7年度の研究の継続して、免疫電顕による観察と正常動物および発癌実験を中心に研究を行った。 免疫電顕で腫瘍細胞中のmyofilamentの10-70%にMSA、CK14陽性反応を示し、vimentinおよびGFAPは正常筋上皮細胞に陰性であるが、vimentinはPA、MYO共に全症例で90-100%に陽性反応がみられた。MSA、CK14は筋上皮細胞の有用なマーカーとして考えられてきたが、5%以上のnonluminal cellおよびMYOの腫瘍細胞に陽性反応を示すのは全症例の1/3程度であった。これらに対しvimentinやGFAPはほぼすべての腫瘍細胞に陽性反応が認められ、MSA、CK14比較してさらに有用なマーカーとなり得ることが示唆された。PA、MYOは1991年、WHO分類で異なった腫瘍に分類されたが、本研究より腫瘍性筋上皮細胞(modified myoepithelial cell)がその成因に大きく関与していることが示唆された。 齧歯類(ラット、マウス)の顎下腺における正常筋上皮細胞についてその組織学的および免疫組織学的検索を行った。出産後1,2,3,4,5,6,7,8,10,14週齢の発育過程の筋上皮細胞についても同様の抗体を用いて光顕免疫組織化学検索を行った。組織学的には筋上皮細胞様の構造物を確認することは出来たが、MSAとkeratinの陽性反応は認めなかった。また、電顕的にmyofilamentに乏しく、筋上皮細胞を特定することが出来なかった。 また、DMBA誘発唾液腺癌を作成し、多形性腺腫様病変の病理組織学的、免疫組織学的検索を行い、MSAとkerratinの反応が導管様構造物の一部にに観察されたが、電顕的にfilamentが観察されるまでには至らなかった。これはDMBAにより誘発される腫瘍は扁平上皮癌が多く、それらの病変が本当に多形性腺腫様病変であるか疑問も残る部分である。さらに発癌実験を繰り返して、検討する必要があると考えられる。
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