ヒト胎盤より脱脂、抽出、遠心分離を繰り返し抽出した骨誘導蛋白と思われる物質の生物学的活性は陰性であった。一方、ラット胎盤のマウス軟組織移植では石灰化物を誘導し、マウス頭蓋冠骨膜上移植では骨を誘導することが判明している。これらの結果より、胎盤にカルシウム誘導作用があるか、または、胎盤はカルシウムリッチであるので軟組織中にカルシウムを放出・沈着させ、その結果カルシウムの沈着が認められることが考えられる。頭蓋骨膜上に移植したときはケルンとなるカルシウムが予定された場に集積し、ブ-スター説に従えば胎盤は場を形成するカルシウムを提供していることになる。また、胎盤にはTGF-beta、ラミニン、フィブロネクチンなど、骨マトリックスと同じ蛋白の存在も知られている。これらの事実から、胎盤による骨誘導は胎盤中に存在する骨に関与する基質が重要で、骨誘導蛋白は存在しないことも考えられる。 胎盤による骨誘導は骨形成因子と言うよりも胎盤中に含まれる骨に関与する成分の相互作用であることも考えられるので、動物実験により再確認を行っている。妊娠14日齢から21日齢のラットより胎盤を摘出し、胎盤中に含まれる蛋白成分を温存させるために凍結乾燥し、これを軟組織や骨膜上ではなく、骨欠部に移植したところ、骨の新生を認めた。現在は免疫組織化学的手法を用いて検索中である。
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