胎盤には各種のホルモン、胎盤蛋白、酵素、サイトカインなどが存在しており、骨を誘導するサイトカインも存在する可能性がある。本研究では胎盤による骨誘導能について検索した。実験は妊娠ラットより摘出した胎盤をマウスの筋肉内、頭蓋骨膜上、頭蓋骨欠損部に移植し組織学的、免疫組織化学的に検索した。 (1)妊娠20日目のラット胎盤を摘出しマウス大腿筋束間に移植した。移植用胎盤組織中には各種の細胞外基質が存在していたが、胎盤を大腿筋束間に移植した時には、移植後2週間目で胎盤は無構造となり、テネシン以外の細胞外基質は陰性となった。4〜6週目になるとレントゲン不透過物を認めるようになり、経時的に無構造物の中にカルシウムが沈着し、26週目では大量のカルシウムの沈着を認めた。大腿筋組織と胎盤の間に増殖した線維性の組織中にはS-100蛋白陽性細胞が多数存在していた。 (2)頭蓋骨膜上に移植した時は、移植後2週目で頭蓋骨と移植した胎盤の間に線維性の組織が介在しており、この線維性の組織中に各種の細胞外基質が集積し、移植した胎盤は筋肉内で無構造となり、胎盤中に存在していた細胞外基質は陰性になっていた。6集目になると線維性組織中にヒアリン様物質を認め、8週目になると骨組織を認めた。 これらの結果より、胎盤には各種の細胞外基質、カルシウム誘導物質、骨誘導物質が存在し、移植後筋組織内では近接する組織よりカルシウムの沈着を誘導し、頭蓋骨骨膜上では増殖した間葉系の組織に何らかのシグナリングを出して環境を整備し、骨組織を誘導していると思われる。
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