顎下腺導管系は終末部から開口部にかけて構造的並びに機能的に分化を示しており、介在部、顆粒性膨大部(ゲッ歯類顎下腺)、線条部、小葉間導管、主導管に分けられる。介在部、顆粒性膨大部以外の導管に共通してtuft cellという細胞が存在している。この細胞の機能は感覚細胞説、再吸収細胞説、分泌細胞説があるが、今だはっきりしたことは分からない。従来の凍結技法よりきわめて深い硝子様構造が得られる高圧凍結技法は、生きたままの状態に近い組織構造が得られると考えられている。しかし試料の固定に安定性を欠く。この細胞の機能を考える一助として高圧凍結のより良い固定とそれを用いてのレクチン組織化学を行った。 1)試料を入れるキャリヤ-として0.3mm厚のリング(金)を作製し、0.1mm厚のプレートで鋏み込む様式を採用し[北重夫氏(東京女子医大)考案]、高圧凍結装置(Balzer社;HPM010)にて加圧固定し、手順に従いLRW、EPON-Araldite包埋試料を作成した。その結果従来になく安定して深い硝子様構造が得られ、形態観察や組織化学的検索が容易になった。 2)tuft cellの細胞頂部に存在している小胞は空胞ではなく繊維状の物質が詰まっているが、ConA-金コロイドを用いたレクチン組織化学でも強い染色が得られ、従来のキャリヤ-を使った固定より反応局在も良好であった。
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