顎下腺導管系は終末部から開口部にかけて構造的並びに機能的に分化を示しており、介在部、顆粒性膨大部(ゲッ歯類顎下腺)、線条部、小葉間導管、主導管に分けられる。介在部、顆粒性膨大部以外の導管に共通してtuft cellという細胞が存在している。ラット唾液腺導管系の他に胃腸域、気管、肺胞等にも存在している。この細胞の機能は感覚細胞説、再吸収細胞説、分泌細胞説があるが、今だはっきりしたことは分からない。従来の凍結技法よりきわめて深い硝子様構造が得られる高圧凍結技法は、生きたままの状態に近い組織構造が得られると考えられている。この高圧凍結技法を用いWistar系雄性ラットの顎下腺主導管を切り出し、試料作成を行った。透過電顕で観察を行い、通常の化学固定との微細構造の違いを比較検討した。また通常の化学固定の試料で導管系に於ける細胞構成、tuft cellと暗調細胞の導管各部位に於ける分布差を明らかにした。また導管系各部位を直接取り出すため、腺房部を除去し導管系のみにする方法を開発した。以下に科学研究費補助金を受領した期間に得られた結果を述べる。 1)導管系各部(顆粒性膨大部、線条部、小葉間導管、主導管)の微細構造を明らかにし、顆粒性膨大部以外の導管系はイオンの修飾を行い最終唾液形成に関与している事が形態的にも明らかにされた。 2)唾液腺体をピンセットで叩、固定液の中で振ることで導管系のみを得た。 3)2)の方法を使い導管系各部の管腔面の微絨毛の違いによりtuft celと暗調細胞の分布を統計学的に調べた。 4)高圧凍結技法で試料作成を行い、通常の化学固定との微細構造の違いを比較検討した。
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