1)ヒスタチンの唾液内性状(ヒスタチン5の生成): ヒト唾液中に分泌されるヒスタチン(H)は主としてH1と3、5であるが、H5はH3からproteolysisによって生成されると予想されている。しかし実際の証明はない。そこでH3からH5の生成をin vitroで実証した。ヘパリンカラムに吸着する唾液ペプチドについてアミノ酸配列を測定したところ、大部分のペプチドのC末端はTyrであった。それ故、H3にα-キモトリプシン(CHT)を作用させ経時的にペプチド断片のアミノ酸シーケンスを決定した。その結果、反応の初期にH5の生成が認められ、時間の経過と共に更に小さな断片に分解された。この知見はヒト唾液腺細胞内ではH1とH3が生成され、分泌の過程でCHT様酵素によってH5が生成されることを示すものである。 2)リポタイコ酸の中和作用: ヒスタチンがリポ多糖体(LPS)に結合し、その生物を活性中和することは既に報告したが、グラム陽性菌の表層成分であるリポタイコ酸(LTA)に対する作用についても追究した。唾液リゾチーム活性はSta.aureusやS.mutansなどの種々のLTAによって阻害されるが、このとき、H類の添加によってリゾチームの阻害が回復した。この回復効果はH1が最も強く、次いでH3、H5であった。またLTAは好中球からのfMLPによるO^-_2の産生を増強したが、この効果はH類によって著明に抑制された。更にH類は種々のグラム陽性菌のLTAとアガロースゲル内の二重拡散法によって沈降線を形成することを確認できた。これらのことはH類が直接的にLTAに結合し、LTAの種々の生物作用を中和として生体防御に役立っていることを示唆するものである。
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