同腹マウスを2群に分け固形飼料と粉末飼料にて飼育すると、条件回避、迷路学習能力の判定スコアは固形スコアは固形飼料飼育群が有意差をもって高くなった。この結果は強度な咀嚼運動が脳の血液循環の促進に起因したものであろうと推定した。この結果を再検討するために、報告されたと同様に飼育したSDラットの海馬脳切片を作製して生理学的、組織学的実験を行なった。海馬は記憶の形成に大きな働きをしていると考えられている。 (方法)離乳可能直後(約40g)のSDラット2腹20匹をそれぞれ粉末飼料、固形飼料飼育の2群に分け約10週間飼育した。エーテル麻酔下で椎骨分離を行い脳を迅速に取り出し、厚さ400ミクロンの海馬切片を作製した。この工程は十分に95%酸素と5%炭酸ガスを飽和されたクレブスリンガーで行なわれた。同心円型刺激電極はシャファーの側枝に設置し、記録はリンガーを充填したガラス電極、3M酢酸カリを充填した微小ガラス電極にてCAI錐体細胞層、錐体細胞から細胞外、細胞内からそれぞれ行なった。また細胞形態を観察するためにルシファーイエロ-(蒸留水にて10%)を細胞内に注入し蛍光顕微鏡にて観察した。(結果)飼育室は午後3時から午前3時まで暗室にし、粉末飼料は専用の容器にて与えた。経時的に体重を測定したが10週目で固形群が多少体重が大きくなった。膜電位、膜抵抗に関しては固形群が粉末料群より大きく、シナプス長期増強は有意差をもって粉末群が大きかった。ルシファーイエロ-による形態の観察ではCAI錐体細胞には大きな変化は観察されなかった。(考察)シナプス長期増強と学習との関係は現在問題にされているが神経構築の生理的役割を検討するには重要な武器であると考えられる。刺激に応じる反応、膜電位、膜抵抗、電気泳動による神経伝達物質の感受性から推察するに粉末群は成体化の速度が遅く若干化現象が現れている様に考えられる。
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