骨髄細胞とPA6細胞との共培養下では、好中球、マクロファージ、破骨細胞の3者のすべての組み合わせのコロニーの中で、好中球と破骨細胞からなるコロニーだけが形成されなかった。従って、造血幹細胞からの分化の過程で、好中球への分化能を失った後に、マクロファージと破骨細胞の前駆細胞が分かれると考えられた。このようなマクロファージと破骨細胞の近縁関係はどちらも最終分化にM-CSFを必要とするということからも支持される。破骨細胞のみのコロニーは20個以下の細胞からなる小さなものしか形成されないことから、破骨細胞の前駆細胞は4回以下の分裂能しか持っていないと考えられた。さらに、破骨細胞のみのコロニーの出現頻度は低く、FACSによる破骨細胞の前駆細胞の分離を種々試みたが、再現性のある結果は得られず、その表面マーカーを明らかにすることが出来なかった。ただし興味深い知見は、M-CSFの受容体(c-Fms)を発現している細胞はほとんどの血球系前駆細胞が発現しているSCFの受容体(c-Kit)を発現していないことである。また、c-Fms陽性細胞を培養してもコロニーはほとんど形成されなかった。従って、マクロファージの前駆細胞は増殖能をほとんど失った後にc-Fmsを発現するようになると考えられた。さらに、活性を持ったM-CSFを産生しないOP9細胞との共培養下でも、マクロファージの前駆細胞が多数出現することもこのことを支持している。しかし、OP9細胞との共培養下では破骨細胞の前駆細胞は見い出されず、破骨細胞の前駆細胞のほうがマクロファージの前駆細胞よりもM-CSFへの依存性が高いように思われた。以上の結果をまとめると、c-Fmsはマクロファージと破骨細胞の前駆細胞が分かれてから後に発現されるようになると推察される。
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