研究概要 |
我々は顎下腺の唾液分泌やイオン輸送機構に関連して,顎下腺細胞のpH上昇に及ぼす陽イオンの影響を検討するために,まず,手始めとしてHSGヒト顎下腺癌由来細胞を用いて,種々の自律神経作動約薬で刺激して細胞内pH(pH_i)の上昇を測定した.すなわち,muscarinic作動薬のcarbachol(10^<-3>M以上)で刺激した場合およびα-aderenergic作動薬のnornepinephirine(10^<-5>M以上)で刺激した場合において,pH_iの上昇が認められた.この上昇はそれぞれの阻害剤であるatropineまたはphentolamineで抑制され,Na^+/H^+exchangerの阻害剤であるdimetylamilorideでも抑制され,protein kinase C (PKC)の阻害剤であるH-7でも抑制された.また.PKCの活性化剤であるTPAおよびphosphatesの阻害剤であるokadaic acidでpH_iは上昇した.また,上記のpH_i上昇はβ-aderenergic作動薬のisoproterenolでは全く認められなかった.また,細胞外液にCa^<2+>が存在しないときには,ほとんどpH_iの変化は認められなかった.これらの結果から,HSG細胞においてはmuscarinicおよびα-adrenergic受容体刺激により,情報伝達系が駆動され,PKCによりNa^+/H^+exchangerが活性化され,pH^iの上昇が生ずるものと考えられた.また,この際細胞外液のCa^<2+>が必至であると考えられた.
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