研究概要 |
我々は顎下腺の唾液分泌やイオン輸送機構に関連して,顎下腺細胞のpH上昇に及ぼす陽イオンの影響を検討するための基本的な研究として,自律神経刺激による細胞内pHの上昇(アルカリ化)機構について、HSGヒト顎下腺由来細胞とA-431ヒト類表皮癌細胞の比較を行った。まず始めに細胞内pHと細胞内Ca^<2+>の同時測定法を考案し,すなわち,Fluo-3とSNARF-1で共染色を行い,ACAS570レーザーサイトメーターで二波長測定を行って,ATP刺激による両細胞は異なるpH上昇機構を示すことを明らかにした。続いて,両細胞をβ-adrenergic作動薬のisoproterenolで刺激するとアルカリ化は全く認められなかった。また,α一adrenergic作動薬のnoradrenaline刺激の場合は,HSG細胞A-431細胞ともに,また,muscarinic作動薬のcarbacho1で刺激の場合では,A-431細胞において一定の範囲内でアルカリ化が認められた。一方,HSG細胞におけるcarbachol刺激では,高濃度においてもアルカリ化が認められた。このアルカリ化はCa^<2+>channe1拮抗剤のnifedipineによる前処理によっても失われず,また,microsomal Ca^<2+>-ATPaseの阻害剤であるthapsigargin処理によっても失われなかった。これらのことから,HSG細胞には高濃度carbacho1刺激によるアルカリ化機構が存在し、これはCa^<2+>independentであると推定された。このことより唾液を産生する唾液腺における神経作動薬による反応はその他の上皮細胞とは異なる機構を持っていると推定される。
|