研究概要 |
中枢のモノアミン性神経は,鬱(うつ)からの解放,意欲・快感・創造性の亢進など精神活動の基幹に重要な影響を及ぼす.この神経の活動は細胞外液中のモノアミン濃度に依存しており,この濃度調節にはアミンの膜輸送活性が決定的に重要である.筆者はアミン輸送活性を調節する因子とその調節機構について研究し,以下の成果を得た. 1.サイクリックAMP(cAMP)はPC12細胞(モノアミン性神経のモデル細胞)の分泌小胞膜アミン輸送を抑制し,この作用によって細胞外液中のドーパミン濃度を上昇させることを世界で最初に明らかにした(J. Neurochem. 64, 600-607, 1995). 2.培養細胞系を用いて,分泌小胞膜アミン輸送活性を特異的に測定する方法を最初に確立した.これにより,分泌小法膜アミン輸送に対する情報伝達分子や薬剤の影響を培養細胞を用いて検定することが初めて可能となった(J. Biochem. 118, 291-196, 1995). 3.この方法を用いて,内在性の神経機能調節因子(neuromodulator)であるAMPや,cyclic AMP, protein kinase C活性化因子であるphorbol esterなどが分泌小胞膜アミン輸送を調節する作用があることを示した(J. Biochem. 118, 291-196, 1995). 4.また,cAMPによる分泌小胞膜アミン輸送の抑制には,蛋白質リン酸化が関与することを示す結果を得た(Pteridines 6, 126-128, 1995; FEBS Lett 368, 411-414, 1995). 5. cAMPによる分泌小胞膜アミン輸送の抑制的調節のメカニスムについて,protein kinase Aによるvesicular monoamine transporter (VMANT)のリン酸化が関与していることを明らかにするため,VMATのアミノ末端側ペプチドに対する抗体を作成したが,この抗体はペプチドとは反応するがVMATとの反応が弱く実用にならなかった.現在,VMATのカルボキシル末端側のペプチドを用いて抗体を調製中である.
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