研究概要 |
意欲・快感・創造性の亢進など精神活動の根幹を支配する中枢モノアミン性神経の活動は細胞外液中のモノアミン濃度に依存する.筆者らは分泌小胞膜モノアミン輸送を抑制的に調節するサイクリックAMP(cAMP)と他の因子の作用機構について検討した. 1.cAMPによる分泌小胞膜モノアミンポーター(VMAT)活性調節における蛋白質リン酸化:VMATの部分ペプチドの抗体を作成し,プロテインキナーゼA(PKA)によるVMATリン酸化を検討した.(1)in vivo系:PC12細胞を[^<32>P]リン酸で標識した実験では,電気泳動ゲルのVMAT相当位置に[^<32>P]シグナルがわずかに検出されたが,このシグナル強度に対するcAMPの効果は認め難かった.(2)Digitonin-permeabilizedPC12細胞を用い,[^<32>P]ATPで標識するin vitro系では,VMATリン酸化効率がさらに低く明確な結論が得られていない.cAMP/PKAによるVMAT機能調節はVMAT蛋白質の直接的リン酸化ではなく,他の蛋白質のリン酸化を介していると考えられる.これを証明するため,VMATのリン酸化可能部位アミノ酸を除去置換した変異VMATcDNA作製を計画している. 2.VMAT機能へのプロテインキナーゼC(PKC)系の作用:PKC活性化剤の作用,プロテインキナーゼ阻害剤,プロテインフォスファターゼ阻害剤の影響から,PKC系もVMAT活性を抑制的に調節することを明らかにした(J.Biochem.投稿中).PKCの場合もVMATそのものはリン酸化されていないと考えられる結果を得てた. 3.中枢モノアミン神経活動へのcAMPの作用:ラット脳線条体へのマイクロダイアリシスによるcAMPアナログ投与は,シナプス間隙DA濃度を上昇させた.低濃度(細胞外液)Ca^<2+>条件下での実験と,レセルピン,ノミフェンシンなどアミン輸送阻害剤の作用との比較検討から,このcAMPアナログの効果はVMAT活性阻害によると考えられる(投稿準備中).
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