ピロカルピン(PIL0)によるラット顎下腺からの唾液と蛋白の分泌に対する神経性ペプチドおよびアドレナリン性遮断薬の修飾作用について検討した。この実験では、薬物およびペプチドは、いずれも1回静脈内投与による方法を用いた。1.PIL0(0.2 mg/kg)に対するvasoactive intestinal peptide(VIP)およびsecretinの作用(1)PIL0による唾液分泌は、3 μg/kgのVIP前投与により有意に増大した。しかし、このような作用は、secretin前投与ではみられなかった。(2)PILOとsecretinの併用投与では、secretinの用量に依存して蛋白濃度の上昇および蛋白総分泌量の増大がみられた。(3)PILOとsecretin(3μg/kg)の併用による蛋白分泌は、初期において著しい増強作用を示した。2.PIL0の低薬量(0.2 mg/kg)と高薬量(10 mg/kg)に対するアドレナリン性遮断薬の作用(1)PIL0による唾液分泌は、いずれの用量ともアドレナリン性α_1遮断薬であるプラゾシン(PLAZ)の100 μg/kg前投与によって有意な抑制を示した。しかし、アドレナリン性β_1遮断薬のメトプロロール(MET0)は1 mg/kgの用量で抑制効果を示さなかった。(2)PIL0の低薬量および高薬量による分泌唾液の蛋白濃度は、いずれもMET0の前投与によって著しく低下し、PLAZの前投与で変わらなかった。(3)PIL0の低薬量および高薬量による蛋白の分泌量は、いずれもMET0前投与によって著しい減少を示した。これらの結果より、(1)ピロカルピンによる顎下腺からの蛋白分泌は、secretinによって著しく増強すること、および(2)ピロカルピンの低薬量による唾液と蛋白の分泌は、高薬量と同じように交感神経節の刺激による終末からのノルアドレナリンのα_1受容体とβ_1受容体の刺激作用が関与していることが示唆された。
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