研究概要 |
外因性に与えたphosphatidylinositol specific phospholipase C(PIPLC)により引き起こされるような骨芽細胞からのPI-アンカリングタンパクの遊離が生理的機構により作動しているか否か、細胞内情報伝達系との関連性について薬理学的に検討した。コンフルエントになったMC3T3-E1細胞を用い、その細胞内情報伝達として重要な働きをしているcAMPおよびカルシウムイオンの影響を調べるためジブチル-cAMP(0.1-3mM)およびカルシウムイオノファーのA23187(0.1-10μM)のPI-アンカリングタンパクであるアルカリホスファターゼ(ALP)の培養溶液中への遊離量を測定した。その際、A23187に強力なALP遊離作用を見い出した。この遊離促進作用はMC3T3-E1, ROS17/2.8およびSaOS-2等の骨芽細胞様細胞において共通の現象であった。A23187はALPの培養液中への遊離を用量依存的に増加させ、MC3T3-E1細胞におけるA23187の効果は処理時間に依存して増加した。しかし、用いた培養液中の血清濃度には依存せず、血清由来の成分を介した作用でないことを確認した。また、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、カルモジュリンおよびプロスタグランジン介在の機構であるかを検討するため、staurosporin, TPA, W-7, W-5およびdexamesadone等を添加した際の遊離量を測定した結果、A23187によるALP遊離の増加はML-7処理により有意に抑制され、TPA,スタウロスポリン処理により影響を受けなかった。 これらの結果より、A23187によるALP遊離の増加がミオシン軽鎖キナーゼを介した生理的機構に関連していることを示唆し、さらにphosphatidylinositolをアンカーとしたALPの遊離が細胞内情報伝達系により調節されている可能性を示した。
|