我々は、Mycoplasma fermentans(Mf)ならびにM.salivarium(Ms)の細胞膜がコンカナバリンA(Con A)によるT細胞の活性化を阻害することを明かにした。本研究では、そのメカニズムを明かにすることを目的とした。 Mf IID 812ならびにMs ATCC23064細胞を超音波処理することにより細胞膜画分を調製した。6-9週令の雄のddyマウスの脾臓細胞をナイロンウ-ルカラムにかけ、その素通した細胞をマウス脾臓T細胞(Tms)とした。5x10^5個のTmsをCon A添加RPMI1640培地(10%FBS含有)0.2mlで48時間培養した後、0.05μCiの^3H-thymidine(TT)でパルスした。さらに、18時間培養した後、細胞に取り込まれた放射能を液体シンチレーションカウンターで定量した。 Con AによるTmsの活性化のCon A濃度依存性を詳細に調べたところ、TT取り込み活性(TT活性)は、5x10^5個のTmsに対して約1.0μgのCon A刺激で最大に達し、それ以上の濃度では急激に減少した。Tmsの死細胞の増加並びに染色体DNAの断片化により、この急激な減少はTmsのアポトーシスによることがわかった。さらに、この系にMsあるいはMf細胞膜を共存させると、Tmsのアポトーシスが加速されることがわかった。以上のことから、Con AによるT細胞の活性化は両マイコプラズマ(M)細胞膜により阻害されたのではなく、Con Aによって誘導されたTmsのアポトーシスが両M細胞膜によって加速されたものであることがわかった。両M細胞膜の有する本活性(アポトーシス促進活性)はTMFα抗体で有意に阻害された。さらに、TmsをM細胞膜で刺激することにより、TNFαが産生されることがELISA法で確認された。したがって、両M細胞膜の有するアポトーシス促進活性には、M細胞膜刺激によりTmsから産生されたTNFαが重要な役割を果たしているものと推測された。
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