研究概要 |
本年度1995年4月から1996年2月までの間に本学附属病院口腔外科にて頚部郭清を施行された口腔扁平上皮癌症例は6例であった。内訳は、男性3例・女性3例、年齢は最高77歳・最低51歳・平均67歳であった。原発部位別では、舌4例・下顎歯肉2例であった。全例術前のX線CT(以下CT)あるいは超音波断層撮影(以下US)にて転移陽性あるいはその可能性ありと判定されていた。磁気共鳴画像(MRI)を施行した症例はなかった。頚部郭清の結果、6例のうち5例に病理組織学的転移陽性リンパ節を認め、リンパ節の個数としては12個であり、画像診断ではこのうち9個を転移陽性と判定していた。また残りの1例では1個が偽陽性であった。摘出リンパ節の肉眼的所見の記録は本学口腔外科で施行され、病理組織学的所見の記録は本学溝腔病理学口座で施行された。今年度は、個々の症例につき、診断画像と病理組織標本とを照合し identification を行い、購入したCCDカメラ(DXC/930)からパーソナルコンピュータに取り込む段階まで行った。また、本年度1例存在した偽陽性症例についてその原因を明らかにするために、1991年3月〜1995年9月の間に頚部郭清を施行された45症例について retrospective に検討した。その結果、CTと比較しUSに偽陽性がより多く認められた。術前USが偽陽性であった7症例について検討した結果、転移陽性を疑わせた所見の主たる原因は、著明な sinus histiocytosis および paracorticalhyperplasiaによるものであることが示された。このような偽陽性を軽減し、転移の初期段階で検出するには、リンパ節の経時的変化(内部エコーの不均一化・短径の増大)の追跡が有効であり、そのためには、初診後1〜2週間隔での定期的検査を体系づけていく必要があると思われた(林孝文他,口腔癌頚部リンパ節転移の画像診断-転移の初期段階での検出に関する検討-,第36回日本歯科放射線学会総会,1995年9月29日,東京にて発表)。
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