研究概要 |
昨年度の研究の結果、CTと比較し超音波断層撮影(以下US)に高頻度で偽陽性が認められた。これを軽減し転移の初期段階で検出するには、リンパ節の経時的変化の追跡が重要であることが示唆されたことから、今年度はUS画像上の経時的変化を中心に検討した。1995年12月〜1996年11月の1年間の口腔癌症例の総検査数は401件であり、この間の総患者数は117例で、平均1患者あたりの検査回数は約3.4回であった。新患は39例であり、部位別内訳は、上歯肉7例、下歯肉7例、舌16例、口底2例、頬粘膜4例、中咽頭3例であった。リンパ節転移の判定規準は、まず初回検査のみで転移陽性と判定する条件として、短径0.8cmを大きく越える腫大像の場合あるいは大きさに関わらず周囲脂肪組織と連続性のない明らかな高エコー域が存在する場合とし、次に転移陽性の可能性があり経時的変化の追跡を要するものとして、短径0.8cm前後の場合あるいは大きさに関わらず高エコー域を認めるものの小さく不確実な場合、とした。頚部郭清により得られたリンパ節の所見の記録と照合は昨年度と同様の方法によった。その結果、舌腫瘍2症例において、触診およびCTで検出し得ない微小転移巣をUSで検出し得た。1例は77歳男性であり、T2N0で舌部分切除後5カ月の時点で中内深頚リンパ節の後発転移を検出した(超音波断層撮影法による術後の経時的観察により頚部リンパ節転移を早期に検出した舌癌の1例,歯放,36(2):100-101,1996)。もう1例は68歳男性であり、T4N0で原発巣と同時の選択的郭清術を予定していたが、術前に中内深頚リンパ節転移を検出した。いずれも経時的観察により高エコー域の出現およびその増大が明らかであり、短径0.4cm以内の小さなリンパ節であるにもかかわらず、その内部の角化壊死を検出していた(今年度の研究の要旨は、昭和大学歯学部歯科放射線学教室創設20周年記念シンポジウム「顎顔面領域疾患の診断にSectional Imagingをいかに有効に生かすか」において1996年12月21日に東京で発表)。
|