本研究は、口腔癌症例より摘出された転移リンパ節を対象とし、病理組織標本と術前画像とを照合し、画像をパーソナルコンピュータにより解析することにより、初期転移巣の検出の限界を明らかにすることを目的としている。検討に利用した画像診断法は日常的に利用可能なコンピュータ断層撮影(CT)と超音波断層撮影(US)とした。対象は本学附属病院口腔外科にて、平成7年1月から平成9年1月までの3か年間に頚部郭清術を施行された口腔癌の症例28症例のうち、病理組織学的転移陽性リンパ節を術前CTで転移陽性と判定できず、USで初期転移巣を高エコー域として検出し得た4症例とした。その内訳は、男性3例・女性1例、年齢は最高77歳・最低48歳であり、原発部位は舌3・口底1例、T分類はT1が1例・T2が1例・T4が2例であった。N分類はNOが3例・N2cが1例であった。病理組織学的には、全例扁平上皮癌であった。CTはSIEMENS社製SOMATOM DR3を使用し、4mmスライス厚にて、Iopamidol300を100ml使用した経静脈的造影下で撮影した。USはALOKA社製SSD-650CLを使用し、探触子は10MHzメカニカルセクタ探触子を使用した。画像解析は、感熱紙に記録された術前US画像をスキャナでパーソナルコンピュータに取り込み、画像処理・分析ソフト(NIH Image 1.60)を使用した。その結果、高エコー域の短径が2.5mm以上、あるいは面積が5.7mm^2以上あれば、短径0.8cmに満たない小さなリンパ節でも転移陽性と判定しうることが明らかとなった。さらに重要なのが初診時からの経時的変化であり、舌癌の3症例において、初診時のUSでは認められなかった高エコー域が、ある時点で出現するという顕著な変化を示していた。NO舌癌の後発頚部リンパ節転移は治療成績を向上する上で最も重要な課題とされているが、こうした経時的変化の綿密な追跡により、後発転移を早期の段階で検出しうる可能性があるものと思われた。
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