研究概要 |
平成7年度(平成8年1月末まで)には22症例の新たな口腔癌症例の治療経験が追加され,既治療患者総数は89例となった.このうち,治療後2年以上の経過観察が可能であった多分割放射線治療単独群18例と化学療法併用多分割放射線治療群12例の治療成績の検討を行った.治療後2ヶ月でのT1-3およびT4症例での完全寛解率は単独群で8/8及び4/10,化学療法併用群で5/5及び5/7であった.再発は単独群では1例のT2及び2例のT4症例,化学療法併用群では1例のT3及び1例のT4症例に生じた.単独群の2年局所制御率はT1,T2症例で87.5%,T3,4症例で20%であり,化学療法併用群ではそれぞれ100%及び55.6%であった.現病死,他病死症例は単独群で3例と2例,化学療法併用群で5例と1例であり,T1,T2及びT3,T4症例の2年粗生存率は単独群で62.5%と80%,化学療法併用群で66.7%と55.7%であった.これまでの報告によると,多分割照射単独治療によりT1-3N0-1の中咽頭癌で約20%の治療可能比の向上が得られると言われているが,我々の経験では口腔癌については,後障害を十分低減させることは可能であるが,従来の治療成績を大幅に上回る治療成績の向上は得難いのではないかという傾向が示された.現在までのところ評価可能症例数は少なく経過観察期間も短いため,結果の信頼性は十分ではない.当面,長期観察症例の蓄積に努める予定である.なお,当初計画していた免疫組織学的検討は染色性に均一性が得られなかったために定量的評価を加えることはできなかった.次年度には,一回線量を増加させた多分割照射法による結果とともに,化学療法併用多分割照射法による結果をも併せて検討に加える予定である.
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