研究概要 |
平成7年度基礎研究として、正常ヒト顎下腺を材料としてサイトケラチンの分離、精製方法を検討し、ペプチドの存在を同定した。唾液腺の場合、ペレットにグルコサミノグルカンが混在するため、その粘性が高く、皮膚を材料とした場合と異なり細胞骨格蛋白の可溶化の前に十分な洗浄処理が必要であった。細胞骨格ペレットからの中間径フィラメントの可溶化には、9.5M尿素、5% 2ME溶液中で20分の抽出により良好なサイトケラチンの分離、精製が可能となった。また、二次元電気泳動により、ヒト顎下腺ではCK5,CK7,CK8,CK13,CK14,CK15,CK17,CK18,CK19がゲル上に分離、展開された。サイトケラチンのフラグメント化は、ホモゲナイズよりもプロテアーゼによる制限分解によるもので、特にCK7,CK8,CK19に多く認められた。 次に、顎下腺および耳下腺の良性リンパ上皮性病変を臨床材料として腺の萎縮過程におけるサイトケラチン発現の変化を免疫組織化学的に検討した。腺系マーカーであるCK8,18ケラチンペア-は、萎縮過程でまずCK8の消失が先行して、サイトケラチンの変化をきたしていく可能性が示唆された。 平成7年度臨床研究としては、唾液腺腫瘍患者の血清サイトケラチン19の腫瘍マーカーとしての有用性の検討を開始した。本年度は症例数が少なく、症例収集を継続中である。
|