本研究では、分泌型IgAの粘膜面への分泌に重要なレセプター(SC)の局所における分布と、その、遺伝子の発現をmRNA transcriptレベルで検討をおこなった。さらにIgA欠損をしめす免疫不全マウスを用いて、イデオタイプIgAを静脈より投与して、胆汁への分泌型IgAの移行を検討し、免疫不全患者の治療モデルの基礎的検討を行い、以下の結果をえた。 1)マウスに於けるSCの分布は、唾液腺、胃腺、腸管、気管支腺、肝臓、腎、子宮腺などの上皮細胞に分布し、分泌型IgAの産生にレセプターとして働くことがしめされた。IgA欠損をする免疫不全マウスにおいても、SCは同様な分布を示し、このレセプターの発現は、局所のIgA産生とは異なった発現調節を受けていることを明らかにした。 2)レセプターの発現レベルを、RT-PCRおよびIn situ hybridization法で検討した結果、唾液腺、肝臓および腸管で発現が強く、他の部では両臓器以下であった。このことはマウスにおいてこれらの臓器が、分泌型IgAによる免疫防御の重要な臓器あることを明らかにした。 3)唾液、胆汁、腸管液中には、IgA欠損をする免疫不全マウスにおいてもfree SC(IgAと結合していない)が持続的に分泌されていることを明らかにし、唾液中に最も多いことを見いだした。 3)免疫不全マウスに、イデオタイプIgAを投与し胆汁への分泌を検討した結果、投与したのち短時間で分泌され、粘膜感染防御のモデルとして有効であることを明らかにした。現在、このマウスを用いて、感染実験およびサイトカインによる分泌型IgAの産生調節を検討している。
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