A. atinomycetemcomitans(以下A. a)細胞質画分から既報(KURITA-OCHIAI、J. Dent. Res.、1995、Vol. 74、125)に準じ免疫抑制物質(以下SF)を得た。マウス脾臓より抗マウス抗体および補体を用いT細胞を分離、濃縮後セルソーターによりT細胞サブセットTh1(CD44^<low>、CD45RB^<high>)Th2(CD44^<high>、CD45RB^<low>)の分離を試みた。しかし分離されたT細胞のサイトカイン産生性を検討した結果、本法によるTh1、Th2細胞の分離精度には問題があると思われる。そこで前述の方法でT細胞の濃縮後、磁気細胞分離法によりCD8^+T細胞を除去し供試T細胞とした。供試T細胞をSF存在下でCon A刺激しサイトカイン産生性をELISA法によりの検討した結果、SF処理ではIL-2、IL-4の著しい産生抑制が認められた。そこでSFより精製したSF 1(KURITA-OCHIAI、Infect. Immun.、1996、Vol. 64、50)を用い同様の検討を行った結果、IL-2、IFN-γの産生抑制が認められた。更に糖質を多く含むSF 2ではIL-4の産生抑制が認められ、IL-2、IFN-γおよびTGF-βの産生が促進された。これらの結果から、SF中に含まれる2つの成分は標的細胞が異なることが強く示唆された。そこで同様の処理を行ったT細胞よりmRNAを抽出し、上記サイトカインのプライマーを用いPCR法によりDNAの増幅を行ったところ、対照T細胞群に比較しSF-1(50μg)添加ではIL-2が約75%、IFN-γは約50%抑制された。しかしIL-4、IL-6産生は全く影響を受けなかった。SF2添加群ではIL-4の産生が約60%抑制された。しかしIL-2やIFN-γなどのサイトカインでは顕著な差は認められなかった。 CD4^+T細胞のサイトカイン産生に及ぼすA. a由来SFの影響をELISAおよび遺伝子レベルで検討した結果、セルソーターによるTh1、Th2の完全な分離精製は困難であったものの、CD4^+T細胞に対し2種のSFはそれぞれ異なった標的細胞を持ち、体液性および細胞性免疫に強い影響を与えていることが判明した。
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