研究概要 |
8種の新品のタービンハンドピ-ス(THP)について,120℃、15分間の条件で,100回,オートクレーブ(クレーブトロン,長田電機工業株式会社)で処理した後の特性変化について検討し,次の結果を得た. 1.THPのヘッドから取り出したカートリッジは,ローターの前後をベアリングで保持され,各ベアリングは,内輪,外輪,ボールおよびリテーナーによって構成されていた.形状や材質で,メーカーによる差が大きかった部品はリテーナーであった. 2.ベアリングの各部品の表面構造を実体顕微鏡で観察すると,全THPにおいてボールの転がり面に、異物の付着や,鈍い光沢をもつなし地を呈した表面構造がみられた.また,潤滑油などが熱で変色したいわゆるテンパーカラーの所見を示したTHPも存在した. 3. THPの回転音の周波数分析において,処理後のローターの回転の周波数が,処理前に比較して著明に減少した例や,雑音(ローターの回転に依存しない周波数域でピークがみられたもの)が生じた例では,ベアリングの損傷が高くなる傾向がみられ,回転音の周波数分析と部品の損傷程度との間に対応がみられた. 以上の所見から,オートクレーブを含めた一連の処理により,ベアリングの構成部品に何らかの変形や変質を生じ,異物の侵入や潤滑油などの付着が容易になった可能性が考えられる.また,注油は異物の洗浄と潤滑を目的として行われるが,今回の結果で異物の付着が全例に見られたことより,より洗浄効果の高い注油法について再検討する必要があると思われた.
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