本研究の目的は、l.Active phaseの1つと考えられる歯周炎急性症状の細菌学的特徴を明らかにすること。 2.歯周炎急性症状の処置として抗生剤の局所投与の有効性を明らかにし、ポケット内細菌の変化を調べることで、適切な投与方法についても検討することである。 当該年度における結果をまとめると、 1.歯周炎急性症状を示す患者28名、28部位と歯周炎急性症状を示さない患者の深い歯周ポケット17部位を比較したところ、歯周炎急性症状を示す部位についての細菌叢の特徴として、細菌培養法の結果から、Porphyromonas gingivalisおよびBacteroides forsythusの総菌数に対して占める割合が有意に高いという結果になった。 2.歯周炎急性症状を示す部位に対する、抗生剤の局所投与(ペリオクリン)1回で、疼痛、熱感、腫脹、排膿、歯肉の発赤などの臨床症状の有意な改善がみられ、歯周ポケット深さやアタッチメントレベルに関しても有意に改善した。さらに、細菌叢の変化に関して、培養法により、P.gingivalisおよびB.forsythusの総菌数に対して占める割合が有意に減少した。また、1回投与後と3回投与後との比較ではほとんど差は見られなかった。 以上の結果から、歯周炎急性症状の細菌学的特徴として、歯周組織破壊に深くかかわっている歯周病原性細菌として注目されているPorphyromonas gingivalisおよびBactyeroides forsythusが増加することが明らかになった。また、歯周炎急性症状を示す部位に関しては、短期的には抗生剤の局所投与1回で、有効な効果が認められた。
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