生体内での接着の劣化を検討するために、サルの生活歯に象牙質に達する平坦面を形成し、その平坦面に接着性レジンを充填した。試験期間としては1日、180日、360日とし、サルの屠殺後にMicro-tensile bond testを用いてレジンの象牙質への接着性の経時的変化を調べた。あわせて破断面のSEM観察を行うことにより接着界面の経時的な変化を観察し接着の劣化機構を検討した。 その結果、実験期間中では接着強さの変化は無かったが、FE-SEMを用いた観察によると接着界面の劣化は含浸層を介して起こることが明らかとなった。含浸層内では、先ずコラーゲン線維間に存在するレジンが徐々に抽出され最終的には一部のコラーゲン線維が露出するようになった。試験期間内において、接着強さに変化がなかったことから象牙質のコラーゲン線維は一部でいわれているように朽ち果てていかないことが判明した。接着の長期安定性を図るためには含浸層内で経時的にレジンが抽出されないことが重要であり、充分なレジンの浸透と重合性の向上が望まれる。さらに、今回採用した試験法は接着の長期耐久性を検討する上で極めて有効であることが判明した。
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