研究概要 |
平成7年度はヒト歯肉線維芽細胞および単球を用いてインターロイキン-1β(IL-1β)あるいはリポポリサッカライド(LPS)刺激によるPGE_2産生とシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の発現の関係を調べた。まずヒト正常歯肉組織より歯肉線維芽細胞を分離し、細胞培養を行った。IL-1βで刺激したとき、培養液中のPGE_2量は48時間まで経時的に増加した。このPGE_2産生はCOX-2の誘導阻害剤であるデキサメサゾンおよびCOX-2活性阻害剤であるNS-398処理により有意に抑制された。またノーザンブロット法により、COX-1,-2のmRNA発現を調べたところ、COX-1mRNAは検出できなかったが、COX-2mRNAはIL-1βとシクロヘキシミドを同時処理したときのみ検出できた。さらにCOX-1,-2のタンパク発現を免疫組織染色により調べたが、COX-1タンパクの発現はコントロール細胞とIL-1β刺激細胞で同じような発現がみられたが、COX-2タンパクの発現はIL-1β刺激細胞で増加した。以上のことから、IL-1β刺激によるPGE_2産生はCOX-1ではなく、COX-2を誘導してPGE_2を産生するものと考えられた。次に刺激剤として歯周病原性細菌であるPorphyromonas gingivalis(P.g.)とActinobacillus actinomycetemcomitans(A.a.)のLPSを用いてPGE_2産生とCOX-2の発現の関係を検索した。その結果、P.g.LPSはA.a.LPSよりも強いPGE_2産生能を有していたが、両者ともCOX-2の誘導・発現を介してPGE_2を産生した。LPSでヒト末梢血より分離した単球を刺激したときは、A.a.LPSの方がPGE_2産生能が高かったが、やはり、COX-1ではなく、COX-2の誘導・発現を介してPGE_2産生することが明らかになった。以上の結果より、歯周疾患におけるPGE_2産生にはCOX-2が関与している可能性が示唆された。
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