プロスタグランジン(PG)が歯周疾患の病因に関与していることが多くの研究により明らかにされている。しかし、歯周組織におけるPGの産生機構に関しては未だ十分に解明されていない。最近ヒト歯周組織においてTH2サイトカインであるinterleukin(IL)-4およびIL-13の存在が報告されてきているが、これらのサイトカインはヒト単球のPG産生を抑制することが示され、歯周組織のPG産生に関与している可能性がある。そこで本研究では、IL-4およびIL-13のIL-1α刺激ヒト歯根膜細胞によるPG産生への影響を検討した。IL-1α刺激は24時間後歯根膜細胞によるPGE_2産生をコントロールに比べて有意に増加させた。このPGE_2産生はcyclooxygenase-2(COX-2)の特異的阻害剤であるNS-398によって抑制されたことから、IL-1α刺激歯根膜細胞はCOX-2を介してPGを産生することが示された。IL-4あるいはIL-13を処理した細胞では、IL-1α刺激によるPGE_2産生が濃度依存的に減少した。24時間IL-1α刺激後の歯根膜細胞のcyclooxygenase活性はコントロールに比べて有意に上昇したが、IL-4あるいはIL-13処理により減少がみられた。IL-1αで12時間刺激後、COX-2mRNAが検出されたが、コントロールではCOX-2mRNAは検出されなかった。COX-1mRNAに関しては、コントロールおよびIL-1α刺激細胞とも同等に検出された。IL-4あるいはIL-13処理によりIL-1α刺激細胞のCOX-2mRNA発現が減少したが、COX-1mRNA発現は変化しなかった。 今回の研究により、歯根膜細胞はIL-1α刺激によりCOX-2を誘導してPGE_2を産生することが示された。TH2サイトカインであるIL-4およびIL-13は、このIL-1α刺激によるPGE_2産生をCOX-2の誘導の抑制を介してdown-regulationした。以上のことから、IL-4およびIL-13は歯周組織におけるPG産生調節に重要な役割を果たしている可能性が示された。
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