歯周病原細菌Eikenella corrodensを凝集させる因子(以下EcAFと略す)をヒト顎舌下腺唾液から精製し、精製EcAFをBALB/cマウスに免疫した。通法によりマウス脾細胞とマウスミエローマ細胞SP-2を細胞融合し、EcAFに対するモノクローナル抗体(以下mabと略す)を作製した結果、4種のmabを得ることができた。得られたmabはすべてlgMで、軽鎖はκ鎖であった。これらのmabはE.corrodensとEcAFの凝集と阻害能がなかったこと、さらに、E.corrodensとEcAFの凝集を阻害するガラクトースやN-アセチル-D-ガラクトサミンなどの糖が、EcAFへのmabの結合を阻害しなかったことから、得られたmabはEcAF上のE.corrodensとの結合部位から離れたところを認識するものと考えられる。EcAFとE.corrodensをin vitroで凝集させた凝集塊を通法により固定、脱水した後、水溶性樹脂に包埋し、超薄切片を作製した。一次抗体として、得られたmabおよび抗E.corrodens抗体を、二次抗体として、粒径の異なる金コロイド標識抗体を用いて超薄切片に免疫二重染色をおこない、透過型電子顕微鏡で観察した結果、E.corrodens菌体およびE.corrodensに結合しているEcAFを検出することができた。さらに、ヒトプラークを採取し、同様の方法で超薄切片を作製し、mabを用いて免疫染色した結果、プラーク中でEcAFを検出することができた。これらの結果から、今回得られたmabはEcAF上のE.corrodensへの結合部位そのものを認識することはできないが、免疫組織学的プラーク中のEcAFの局在性を検索するのに非常に有用な抗体であることが明らかになった。
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