研究概要 |
歯根嚢胞の増大に伴って周囲の骨吸収を直接行っている細胞は破骨細胞であり,この破骨細胞に対して働くケミカルメディエーターの一つにはプロスタグランジンE_2(PGE_2)があるとされる.そこでわれわれは,嚢胞壁におけるPGE_2の生成能に,歯内治療がいかなる影響を及ぼすかについて,既に平成元〜3年度科学研究費補助金一般研究C(01571051)により報告した.今回,実験方法に更なる改良を加え,より臨床に則した結果を得る可能性について検討を行った。対象症例は,臨床的に歯根嚢胞と診断された症例であり,歯内治療前に,新しく作製した組織採取器具を用い,嚢胞壁を部分的に採取し歯内治療前実験材料として用いた.この後に通法に従い歯内治療を施行し,根管充填後一定期間を置いて嚢胞摘出術を施行し,得られた嚢胞壁を歯内治療後実験材料として用いた.得られた実験材料は,各々72時間初代培養し,^3H-アラキドン酸(AA)を加え48時間ラベルを行った後,更に3時間培養し,その培養液中ならびに細胞中のAA代謝物を分離・定性し,放射活性を測定した. 今回,実験に供された症例はわずかであるが,われわれが新しく作製した組織採取器具により同一個体に於いて経時的に歯内療法前・後の嚢胞壁を実験材料として得る事が可能となった.また,そのAA代謝の検索が可能であった.今後,症例を重ねることによりさらに臨床に則した歯根嚢胞に対する歯内治療の有用性について検討を加えることが可能になったと考えられる.
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