現在までに歯質ハイドロキシアパタイト{Ca_<10>(PO_4)_6(OH)_2}の解析にX線光電子分光分析法を応用し、ヒト健全エナメル質、象牙質から、結晶中のリンと結合した酵素と水素と結合した酸素の原子数の比およびカルシウムとリンの比を求め、各試料間およびエナメル質、象牙質において結晶組成、構造に起因する差があることを報告した(1988日本歯科保存学会秋季学会)。さらに、抜去歯を提供したヒトの齲蝕感受性についても検討を行い、報告した(1991日本歯科保存学会春季学会)。また、上記の結果をもとに、歯質の齲蝕感受性を評価する方法を検討し、簡便かつ分析精度が高く臨床において応用可能なX線光電子分光分析法によるエナメル質生検法の開発を試みた。これまでに、市販のコンポジットレジン研磨用ディスクを用いて、試料採取および分析を行った。すなわち、齲蝕を有するヒトの歯より、健全エナメル質、齲蝕エナメル質の微粉末(0.1g)を採取し、これを試料としてX線光電子分光分析装置(ESCA)にて、検討を行い、カルシウムとリンの比を求めた。さらに、高い分析精度でもあることも確認し、報告した(1995Vol.38.No.5日本歯科保存学雑誌)。しかし、結晶中のリンと結合した酸素と水素と結合した酸素の原子数の比は、試料採取用ディスク自体に酸素、炭素等が含まれているため、分析できなった。そこで、歯質ハイドロキシアパタイトの結晶構造の解析に重要と思われる元素の分析のために、研磨砥粒やディスク、ストリップスの母材に歯質構成元素の含まない試料採取用ディスク、ストリップスを開発する必要がある。現在までに、チタン合金を母材とした試料採取用ストリップスが有望であるという基礎データを得た。本研究では、これらのデータをもとに歯質から被破壊的に試料採取のできるチタン合金ストリップスの開発に着手し、原型は完成したが、チタン合金の加工は、難しく厚さの点で若干の変更が必要であるという結果を得た。今後さらに検討を加え、光電子分光法によるエナメル質生検法の有用な活用法を確立する予定である。
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