研究概要 |
GCF好中球は臨床的指標から活動性を有する歯周ポケットが少なくとも1/3顎で2歯以上存在する中等度の成人性歯周炎群,早期発症型歯周炎群および健常者群の3群に分け,Drouinらの方法に準じた洗口法によって採取した。各群におけるGCF中の好中球のアポトーシスの検索を(1)光顕レベルでの細胞形態観察,(2)アポトーシス関連抗Lewis Y抗体を用いたLe^y糖鎖抗原の発現状態の観察,およびアガロース電気泳動によるDNA断片化の観察によって行った結果,採取後6時間以内ではいづれの群においてもアポトーシスを示す好中球の数は極めて少なかった。しかしながら,24時間経過後の好中球ではその数が増加する傾向を示した。そこで24時間経過後の好中球に成人性歯周炎群および健常者群のGCFを添加し6時間の培養を行った結果,健常者GCF添加群は成人性歯周炎GCF添加群に比較して有意にアポトーシスを示す好中球が増加していた。つまり炎症局所において好中球のアポトーシスを制御する因子が存在している可能性を示唆している。そこでさらに,末梢血好中球にLPSあるいは炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-1βおよびIL-6)を添加して培養したところ,IL-1βとIL-6は48時間の培養においてアポトーシスを遅延させた。一方,TNF-αは逆に短時間のうちにアポトーシスを誘導することが明らかとなった。上述の各群から採取したGCF中のMMP-9の動態をゼラチナーゼ活性およびイムノブロット法で検索した結果,健常者群GCFに比較して成人性歯周炎群および早期発症型歯周炎群GCFで有意に高いことが明らかとなった。さらにLPSおよび炎症性サイトカイン添加による末梢血好中球でのMMP-9の産生,誘導を検討した結果,このGCF中におけるMMP-9の主たる産生細胞は好中球であることが証明された。
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