研究概要 |
本研究は,歯肉溝滲出好中球のアポトーシス制御とヘミデスモゾーム構成分子の破壊について,これを92-kDゼラチナーゼとの関連において検討した。その結果、in vitroにおける評価において,GCF中の好中球は環境因子(炎症性メディエーター)によってそのアポトーシスが制御されることを明らかにした。一方,GCF中のゼラチナーゼ活性について検討した結果,(1)成人性歯周炎および早期発症型歯周炎患者由来のGCFは,健常者由来のそれと比較して明らかに高いこと,さらに,(2)この活性の主要はバンドは,好中由来型(92-kD)と一致することが明らかとなった。そこで平成8年度は,ヘミデスモゾーム構成分子およびその付属構造におよぼす92-kDゼラチナーゼ(MMP-9)の影響について検討した。まずMMP-9の基質特異性を検討するため,精製された潜在型MMP-9をAPMAで活性化し,基底膜成分であるラミニンおよびIV型コラーゲン,あるいはanchoring fibrillsであるVII型コラーゲンに作用させ,その分解産物をSDS-PAGEにて分析した。その結果,活性型MMP-9はIV型コラーゲンのプロα鎖を低分子化(分解)させたが,ラミニンおよびVII型コラーゲンは分解されなかった。つぎに,ヘミデスモゾーム構成分子(水疱性類天疱瘡の主要抗原;180kD-BPA)として,リコビナントBP180(融合タンパク)を用い,MMP-9による分解活性を検討した。この融合タンパクは,N-末端側のglutathione S-transferase(GST;細胞内ドメイン部分,26-kD)とC末端型のBP180細胞外ドメイン部分(16-kD)によって構成されており(GST-N△1;42-kD),BP180細胞外ドメイン部分は,60残基のアミノ酸からなる非コラーゲン領域と80残基のアミノ酸からなるコラーゲン領域を含んでいる。精製されたMMP-9(潜在型および活性型)をGSTおよびGST-N△1に作用させた結果,活性型MMP-9はGST-N△1のコラーゲン部分(〜8kD)を切ったが,融合タンパクのGST部分には影響しなかった。すなわち,MMP-9は細胞外ドメインのコラーゲン部分を特異的に分解することが明らかとなった。
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