本研究では、根尖性歯周炎の発症、進展における細胞外マトリックス(ECM;Extracellular Matrix)成分分解系について、その細胞レベルでの調節機構の一端を検討することを目的とした。そこで、今回は、種々の炎症反応に深く関与している炎症性サイトカインが、ヒト歯髄細胞(DP細胞)ならびにヒト歯根膜細胞(PL細胞)のMMPs活性およびTIMPs産生に及ぼす影響について検索した。 前年度までに、DP細胞ならびにPL細胞のコラーゲン分解活性とTIMP-1産生に対するインターロイキン-1(1L-1)などの炎症性サイトカインの影響について検討してきた。本年度は、主としてゼラチン分解活性とTIMP-2産生について検索を進めた。その結果、ゼラチン分解活性について、IL-1はPL細胞に対して濃度依存的にゼラチン分解活性を高める方向に作用することが示唆された。また、ゼラチンザイモグラムによる分析の結果、そのゼラチン分解活性は、MMP-9(ゼラチナーゼB)ではなく、MMP-2(ゼラチナーゼA)によることが明らかになった。一方、TIMP-2については、IL-1はPL細胞に対して、500pg/mlの濃度で、その産生を促進した。さらに、遺伝子レベルでのDP細胞ならびにPL細胞におけるMMPsとTIMPsの発現を確認するために、ノーザンブロット分析を行った。その結果、[^<32>P]を用いたラジオアイソトープシステムによるMMP-2(ゼラチナーゼA)のmRNAならびにdigoxigenin(DIG)をハプテンとしたDIGシステムによるTIMP-1のmRNAの発現について、IL-1作用後12時間では、その発現に差は認められなかった。今後は、他のサイトカインについても検索を進めていく予定である。
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