抜髄処置を施した後に、根管内でどの程度細菌残留が生じるのかを検索した。 露髄のない生活歯髄を有する43本の永久歯を対象とした。対象歯を不可逆性歯髄炎症例(13歯)、可逆性歯髄炎症例(25歯)および健全歯(5歯)の3グループに分類した。なお、健全歯グループは補綴的要求で抜髄処置が必要とされたものである。 対象歯は、抜髄処置され通常の根管治療が施された。何回かの根管治療によって臨床症状もなく、臨床的には根管充填が可能な時点で、根管内細菌検査を行った。細菌検査は「チェア-サイド嫌気培養システム」を使用し、試料を塗抹した血液寒天培地を嫌気状件下で、3日間培養した。 不可逆性歯髄炎症例の9症例(69.2%)と可逆性歯髄炎症例の6症例(24.0%)に根管内細菌残留が認められた。 しかし、健全歯グループからは細菌の残留は認められず、根管内細菌残留は外から持ち込まれたものではなく、元々感染した歯髄に含まれた細菌が残留したものと考えられた。 細菌残留が認められた根管のうち100個以上のコロニーが認められたような症例では、通常の根管処置では無菌を得ることは出来なかった。このような症例では、感受性試験の結果に基づいて選択した抗生剤を根管を介して局所投与する事で比較的短時間(平均3.1回と4.8回)で根管を無菌にすることが出来る。このように歯髄疾患歯に対しても感染根管と同様に、細菌検査を基準にした根管治療を行うことが必要であり、「チェア-サイド嫌気培養システム」を応用した治療が根管内を無菌にするために有効である。
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